トラウマの種類を知るとTREがもっとよくわかるーあなたの神経にはどんなTREが効く?

トラウマの種類を知ると“TREを継続する”の意味が腑に落ちる

グループTREのクラスでは、時々参加者の方々に投げかける問いがあります。

「なぜTREをしていますか?」

多くの方は、TREの名前の通り(緊張やトラウマ解放エクササイズ)、「疲れたから」「リラックスしたいから」とおっしゃいます。

実際に、TREワークの効果はすぐに現れて、肩こりや腰痛が軽減されたり、TREをやった日にはよく眠れるようになったりします。

けれど、TREの本当の価値は、そのさらに奥にあります。

それは、私たちが気づかないうちに抱えている“神経の癖や反応”そのものが整いはじめるということ。

考え方や性格というよりも、もっと深い身体の層――生きてきた中で身につけてしまった緊張の習慣や、人に対するときの無意識の反応、生きづらさの元になっているパターンがゆっくりと変わりはじめることです。

そして実は、その“神経の癖や反応”の正体こそが、トラウマの本質なのです。

トラウマとは特別な出来事だけを指しているのではなく、私たちの神経系に刻まれた“反応のパターン”のこと。大きな事件だけでなく、日常の中の小さな出来事の積み重ねによって、ほとんどすべての人が、知らないうちに小さな神経の傷を抱えています。

その傷が、“生きづらさ”として現れているだけ なのです。

  • 「人付き合いが苦手」
  • 「不安になりやすい」
  • 「いつも疲れている」
  • 「自分を責めてしまう」

こうした感覚のひとつひとつがトラウマ。だからこそ、TREはリラックスのためだけのものではなく、神経そのものを育て直し、生きづらさの根っこを整えるワーク といえるのです。

この記事に興味を持ってくださり、ありがとうございます。
これからトラウマの種類や心の仕組みについてお話ししていきますが、読み進める前に、ひとつだけ大切なお約束をしていただきたいのです。

私は、TREの専門家として、これまで多くの方の心に寄り添ってきました。ですが、私は医師(精神科医・心療内科医)ではありません。ここでお伝えする内容は、あくまで私のセッションにおける経験や知識に基づくものであり、医療的な診断や治療を目的としたものではないことをご理解ください。

もし今、病院に通われていたり、お薬を服用されている場合は、主治医の先生のご指導や診断を何よりも優先してください。「ブログにこう書いてあったから」といって、ご自身の判断でお薬を中断したり、通院をやめたりすることは決してなさらないようにお願いいたします。

お読みいただいている方の心と体を守るために、そして安心して記事を読んでいただくために、どうぞよろしくお願いいたします。

目次

トラウマは「出来事」ではなく、“神経の余韻”

「トラウマ」というと、大きな事件を経験した方に残る心の傷をイメージしますが、現代の神経科学ではこう理解されています。

トラウマ = 神経系が処理しきれずに残った“反応のパターン”

そのため、トラウマといっても、色々な種類が存在します。また、仮に同じ出来事が起こったとしても、傷として残る人と残らない人がいるのは、その出来事の大小ではなく、その後の神経の反応が違うからなのです。

別の言い方をすると、トラウマとは出来事への反応パターンなので、誰にでも大小さまざまなトラウマが存在する可能性があるともいえます。

トラウマの種類 × TREの効果

では、大きなトラウマや小さなトラウマなど、一回の出来事で引き起こされるトラウマ、繰り返し起きた出来事への反応トラウマなど、トラウマには、どのような種類があるのでしょうか。

ご自身の心身の状態が、どのタイプに該当するのか想像できると、神経の育て直しであるTREをさらに効果的に行うことができるようになるでしょう。

① 単回性トラウマ(Single-event Trauma)

交通事故、怪我、災害、暴力など
一度の衝撃が神経に残ることによって引き起こされます。

● 神経の状態
・瞬間のショックが“凍りつき”を残す
・身体のどこかに衝撃が閉じ込められる

● TREの効果
非常に相性がよい
・身体に残った“衝撃の余韻”を放電していく
・比較的少ない回数で変化が出やすい

② 複雑性トラウマ(Complex Trauma)

家庭・学校・職場での慢性的ストレス
長期間のパターンとして、神経の反応が固まることによって引き起こされます。

● 神経の状態
・慢性的な高い警戒心/警戒域を越えると心がシャットダウンされる
・「いつ大丈夫かわからない」という身体感覚
長年の緊張がクセになる

● TREの効果
・即効ではなく“土台からの育て直し”
・安全に戻る力が少しずつ育つ
継続がとても重要

③ 発達性トラウマ(Developmental Trauma)

幼少期の不安定な環境、愛着形成の揺らぎ
“大丈夫”と感じづらい環境で育つことによって引き起こされます。

● 神経の状態
・安全の土台が弱い
・自分の身体感覚より環境に合わせすぎる
・大人になっても“安心”を拾いづらい

● TREの効果
ゆっくりだが深く効く
「安全に戻れた」という体験を再構築
・グループ/パーソナルとの併用が理想
継続がとても重要

④ 小さなトラウマ(little-t Trauma)

否定の積み重ね、空気を読む癖、重圧、我慢
→ 現代で最も多いタイプともいわれ、さりげない小さな出来事の繰り返しによって引き起こされます。

● 神経の状態
・緊張の原因に気づきにくい
・疲れやすい/不安が強い
・周りを優先する癖が強い

● TREの効果
・身体に染みついた「微細な緊張」を日々リセット
・“ゆるむ体験”の積み重ねで神経が育つ
セルフ(個人ワーク)+グループとの相性が抜群

⑤ 代替トラウマ(Vicarious Trauma)

他者の感情や痛みを受け取ることで起こる
→ セラピスト、医療者、教師、親に多いとされています。

● 神経の状態
・協働調整力が高い人ほど受けやすい
“優しさゆえの疲労”
・共感疲労や燃え尽きが起きやすい

● TREの効果
・自他の境界を身体レベルで回復
・余計なものを受け取りすぎない神経を育てる
定期的なケアがとても重要

⑥ 複合トラウマ(Mixed Trauma)

複数のトラウマが重なる状態
→ 現代では、とても一般的とされており、上記のどの組み合わせなのかを分析しながら対処していくことが必要です。

● 神経の状態
・発火ポイントが複数
小さな刺激でも大きく反応しやすい
・原因が“ひとつ”に見えない

● TREの効果
・まずは“神経の安全の土台づくり”
・深い緊張がゆっくりほどけていく
・パーソナルセッション/グループセッション/セルフワークを組み合わせていくことで早い変化が生まれる

★まとめ:トラウマの種類 × TREの作用

  • 単回性 → 少ない回数でも変化が出やすい
  • 複雑性・発達性・複合 → じっくり継続が不可欠
  • 小さなトラウマ・代替トラウマ → 定期的なケアが必須

つまり、TREを継続的に行うことで、多く種類のトラウマからの回復が見込まれます。

なぜなら、TREのワークは「一度美味しいごはんを食べたから元気いっぱい!完全回復!」というものではなく、滋養のある食べ物を少しずつ食べて体調を整えるような、いわば 神経を回復させるための“必要な栄養” ともいえるからなのです。

ここまで読んできて、TREについて詳細を知りたいと思った方は、こちらを読んでみてください。

なぜTREは“継続”が大切なのか?

神経系は筋肉と同じで、経験の積み重ねで形づくられる臓器ということはご存知ですか?

TREは、無意識のうちに“恐怖を感じてしまう” 神経回路を頻繁に使っていたことから脱却し、“安心・安全に感じられる”神経回路をより高い頻度で使えるように身体から育て直すワーク です。

だからこそ、継続することで、神経を筋肉のように育てていくができるのです。

短い時間でいい。

回数も気にしなくていい。

ただ、続けていくことことが、あなたの神経にとっての最大のギフトになります。

TREにおける3つの神経ケア

それでは、TREをつかった神経のケアを、よりイメージしやすいようにデンタルケアにたとえて説明しましょう。

3つのケアが相互に補い合うことで、神経が効果的に育ち直します。それぞれが役割の違う“役目”で、どれかが優れているとか、上下があるものではありません。

① セルフTRE → 歯磨き(毎日のケア)

セルフTREは、一回、認定プロバイダーからTREを教わった方がご自身で、自分のために行うワークです。時間も場所も自分で決めて、もっともやりやすい環境で行いましょう。

セルフTREは、歯のケアでいえば、毎日の歯磨きに例えることができます。

  • 微細な緊張を毎日リセット
  • 自分で安全に戻る道筋を学び直す
  • 神経の基本の土台をつくる

 自分の神経を自分で世話する「日々の習慣」ともいえます。

② グループTRE → 歯磨き指導(フォーム確認)

グループTREは、認定プロバイダーが行うグループセッションに参加するワークです。同じ時間に、一緒に行う方が周り(オンライン上であっても)にいることで、その体験を共有することができます。

グループTREは、歯のケアでいえば、歯の磨き方の指導ともいえます。自分のやり方やクセを客観的に観察することができ、他の人が一緒に実践されることで新たな視点を得ることができます。指導にたとえられるといっても“怒られる”ことはありませんのでご安心を。

不思議なことに、グループで行ったときに出る反応は、セルフTREともパーソナルTREとも異なり、ひとはそれぞれ影響しあっているということを感じることができます。TREの体験は共有しますが、ご自身の心身の傷について、特に語る必要はありません。“私はここにいていいんだ”という安心感のもとでセッションを受けることができます。

  • 他者の存在で神経が協働調整される
  • 自分では見えない癖に気づける
  • 安心感の“幅”が広がる

一人では気づけない成長ポイントを得られる場です。

③ パーソナルTRE → 歯石とり(専門ケア)

パーソナルTREは、認定プロバイダーと一対一で行うセッションです。専門家があなただけを詳しくみるからこそ、細かなケアを受けることができます。まるで歯石を少しずつとることで本来の歯の輝きが取り戻せるように、本来の心の輝きや、あなたらしい在り方を取り戻していくことができます。

  • 深層の緊張に安全にアプローチ
  • プロのナビゲーションで変化が加速
  • 無意識のパターンが自然にほどける

自分では触れられない領域までケアが届く時間です。

TREは「神経を育てるヨーガ」である

私が提唱している在り方としてのヨガでは、ヨガ哲学・神経科学・ソマティックワークが自然にひとつの流れになっています。

  • 身体(アナマヤ)
  • 心(マノーマヤ)
  • 智性(ヴィジュニャーナマヤ)

これらが“安全”によって再びつながるとき、人は本来の自己感へ戻っていきます。自分の在り方を、安心して心の底から認められるときにこそ、自分の存在を認めることができるのです。

その視点でみてみると、自分の安全・安心感を育てるワークであるTREは、神経系を育てるための現代ヨーガともいえるでしょう。

まとめ:あなたはなぜTREをするのか?

TREは、あなた自身の神経を、あなた自身の手で育てるためのワークです。

あなたが感じているトラウマが、どんなに大きくても小さくても、単純でも複雑でも、神経を育て直すことで生きやすくなるでしょう。神経は何歳からでも育て直すことができます。

もし、あなたが、この世界は生きづらい、無意識のうちに何故かいつも苦しくなってしまうと感じたら、TREを一緒にやってみましょう。

ゆっくりでいい。
小さくていい。
ただ続けること。

あなたの内側がほんの少し広く、やわらかく、自由になりますように。

月一回のグループTREセッションのご案内

カオン式在り方としてのヨガでは、毎月第3木曜の夜20時から、定期的にオンラインでのグループTREセッションを行っています。

12月の開催日は、12月18日木曜日です。時間は夜20時から21時の1時間。(人数によって若干の延長アリ)
オンラインレッスンはZoomで開催いたしますので、参加用URLはお申込みいただいた方に直前にお知らせいたします。

当月の具体的な日程は、前月末にお知らせします。わからないことがあれば、公式LINEからお気軽にお問い合わせください。

いきなり一対一のパーソナルTREセッションは不安だな、という方はグループTREセッションから体験してみてくださいね。

著者プロフィール

ヨガ指導者養成(Yoga AllianceE-RYT500)/TRE国際認定プロバイダー/ippon blade®公式インストラクター

2017年出版の書籍『感じるヨガで、』(※)は、「体の声を聞く」ヨガとして静かな反響を呼ぶ。現在は、オンライン・オフラインでポーズの完成にこだわらない「感じるヨガ」やTRE(トラウマ緊張開放エクササイズ)のワークショップを開催し、30代〜50代を中心に「自分を整えたい」と願う人々をサポートしている。(※)amazonのアフィリエイトリンクが開きます

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