生きやすくなりたかった。それがヨガへの入口でした。
今思うと子供の頃から、周りの大人を信頼することができませんでした。頼ろうと思えなかった。学校では理由などの説明が何もないまま、従うことを求められることに、いつも違和感がありました。だからといって先生に「なぜですか?」と聞くこともできずに、ただその違和感をずっと抱えていました。
級友たちがその疑問をあまり持っていないように見えることにも、また違和感というか疎外感がありました。孤立はしていなかったけれど、孤独だった。そういう子供時代だったなと思います。
その存在というか、生きにくさを何とかしたくて、いろんなことを探していくうちに、ヨガにたどり着きました。ボディーワークやさまざまなワークも体験して、氣がついたらヨガの先生になっていたという感じです。
クラス中に起きていること
ヨガのクラスをしている時、ワタシの中で不思議なことが起きています。
最初はガイドしながら自分の体でアーサナを体現して、そのフィードバックを感じながら次のアーサナというようにメニュー構成を作っていました。それがだんだんと、「感じているワタシ」と「ガイドしているワタシ」の間に距離が生まれてきたんです。
シャバーサナや座位瞑想での言葉かけは、文章を準備するのではなく、話す直前に4ワードくらいが頭に浮かんで、それをそのまま口から出している感じになります。まるで今までのヨガマスターたちの何かがそばに来て、イマこの教室でクラスを展開してくれているような。もう一人のワタシはそれを聞きながら、深い瞑想状態の中でクラスを体験している——そんな感覚なんです。
生徒さんからも「クラス中の先生はいつもと違いますよね」とよく言われます。思えば、その時間は迷いがなく、視座が高くなっていて、教室全体をホールドしているような感覚です。生徒さんの背中側の様子まで、なぜか感じ取れるみたいな。
でも、日常生活に戻ると、その感覚はあまりありません。。というかほとんどない。
うっかりミスをしたり、道に迷って、あれ間違ったと思って戻ってみたりと。自分のことを「ポンコツ」だなと感じる場面が普通にあります。
「クラスの私」と「日常の私」。そのギャップが、ちょっと氣になっていました。このギャップを埋めることが自分の成長なんじゃないかと、ずっと思っていたんです。
ポリヴェーガル理論で見えた、あの感覚の正体
TRE®️を学び、神経系のことを少しずつ理解してきた今、このクラス中の状態が何だったのか、言葉で説明できるようになりました。
ポリヴェーガル理論では、自律神経を3つの種類で捉えます。交感神経は活動・集中・戦闘準備の状態。腹側迷走神経は安全を感じながら他者と繋がれる状態——温かさ、共感、場をホールドする力。背側迷走神経は深い静寂・変性意識・内側への没入。
カオン式の見立てでいえば、クラス中のワタシはこの三つが同時に発動している”コンバイン状態”にあるようです。集中して場全体を把握している(交感)。生徒さん一人ひとりと繋がりながら教室をホールドしている(腹側迷走)。深い瞑想状態の中で言葉が降りてくる(背側迷走)。通常、変性意識に入るとグランディングが外れやすいといわれます。が、地に足がついた状態の上に開く変性意識は、安全で、かつ非常に豊かな意識状態になります。これが、ワタシが20年探求してきた「在り方としてのヨガ」が辿り着いた場所のひとつかもしれません。
これはある意味で、ワタシが考える「人としての意識」の一つの可能性じゃないかと思っています。特別な人にだけ起きることではなく、身体と神経系が整ってきた時に、誰の中にも開いてくる可能性として、です。
朝ごはんを食べながら、ふと氣づいたこと
今朝、朝ごはんを食べながら、なんとなくそのことを考えていました。
そしてふと思ったんです。もし日常生活も、クラス中みたいな感覚で生きられたとしたら——それって、あんまり面白くないかもしれない!(笑)
先が見えないから面白い。あら、間違ったって戻るから面白い。道をぐるぐると変えるその行為が、もしかしたら、好きで生きてるんだなーと。そう思ったら、埋めようと思っていたギャップが、急にとても愛おしく見えてきて、一人で笑ってしまいました。
ギャップを埋めることが成長なんじゃなくて、そのギャップの両方を持ちながら生きていくことそのものが、言い換えると、その状態を理解し、それを選択していることが、今のワタシの在り方なのだ!!
ポンコツな日常も、降りてくるものに委ねるクラスの時間も、どちらもワタシ。未完成な感覚が完成へと向かう力、それこそが生きる力ではないかな。
よくある質問
Q:「在り方としてのヨガ」と一般的なヨガの違いは何ですか?
A:ポーズの完成や柔軟性の向上を目的にしません。身体感覚を通じて自分を深く知り、神経系を整えながら「在ること(Being)」そのものを丁寧に味わう実践です。
Q:ポリヴェーガル理論をヨガに取り入れるとどんな変化がありますか?
A:自分の今の神経系の状態を観察できるようになります。緊張しているのか、安全を感じているのか、内側に沈んでいるのか。それがわかるだけで、自分自身の捉え方に変化が起きます。例えば、イライラしてる時、そんな自分はダメだ。だから変えようではなく、イライラしてるのは交感神経が優位になってしまっているからなのねー、と現状を知ることで受け入れることができます。それだけで、自分に過度のダメ出しをすることがなくなってきます。
Q:身体が硬かったり運動が苦手でも始められますか?
A:はい。ワタシ自身が体育の苦手な子供でした。むしろ「できない側」から始めた人の方が、身体感覚を丁寧に拾えるので、ヨガ向きですとお答えしています。
あなたにも、そういうギャップがありますか?
「本来の自分」と「日常の自分」の間に、ギャップのような距離を感じることはありますか?
瞑想中・ワーク中・没頭している時間——そういう時だけ現れる自分と、普段のぼんやりした自分。そのギャップを「どうにかしなければ」と思っていたとしたら、少しだけ視点を変えてみてもいいかもしれません。
神経系が整ってくると、日常の中にもあの感覚(本来の自分)が少しずつ滲み出してきます。瞑想的ヨガ、TREや仰臥瞑想(ヨガニドラー)の実践などで、ワタシ自身がそれを体験してきました。急がず、丁寧に。身体に寄り添う時間を、生活の中に少しずつ持つこと。それだけでも、神経系は変わりはじめるはずです。
これから開く長野・原村のリトリート施設では、そういう身体と神経系への丁寧なアプローチを、じっくりと探求していける場所にしていきます。(オープン日未定)
公式LINEでは、季節と身体の繋がり、神経系を整える日常のヒント、リトリート施設の先行情報などをお届けしています。よかったら、覗いてみてください。



