プラーナヤマの真髄:クンバカ(保息)の効果と種類を徹底解説 | ヨガ呼吸法(第一弾)

プラーナヤマを少し詳しく語ってみた

呼吸法と訳されてしまうヨガのプラーナヤマですが、テクニックとしてその名称を覚え、やり方を学ぶというのが一般的なのだと思います。

ティーチャートレーニングではやり方を学ぶことはもちろん大切ですが、それ以上に「プラーナヤマがどんな感覚や効果を自分にもたらすのか」を十分に体験することに重きを置いて指導しています。

そんなスタンスなので、私のヨガクラスではあまり専門的なヨガ用語を使いません。ただ、生徒さんの感覚が深まり、微細な変化を受け取れるようになった段階で、少しずつ用語を取り入れると、それまでの体験が突然次のステージへと導かれるのです。

最近、私は回復をテーマにシャバーサナや仰臥瞑想を研究しています。その流れで、プラーナヤマの中でも特に「保息(クンバカ)」について改めて注目するようになりました。今回は、このクンバカについて少し深掘りしてみたいと思います。

呼吸のプロセス――プーラカ、レチャカ、クンバカ

プラーナヤマは、大きく分けて三つの要素で構成されています。吸う(プーラカ)、吐く(レチャカ)、そして止める(クンバカ)です。この三つは呼吸の基本的なプロセスですが、ヨガの古典テキストでは「クンバカこそがプラーナヤマそのものである」とまで言われています。それほど重要な要素なのです。

吸息は能動的でポジティブなエネルギーを体内に取り込む行為、吐息は受動的でネガティブなエネルギーを外に放つ行為といえます。一方、クンバカはこの二元性を超越した存在そのものを表します。ヨガが目指す「二元性を超える境地」において、クンバカは極めて重要な役割があるというのも頷けます。

クンバカの生理学と心理的効果

クンバカを行うと、体内の酸素濃度が一時的に低下し、二酸化炭素濃度が上昇します。この状態は、脳内の血流を促進し、新しい神経経路の形成を助けます。また、脳の深部にある視床下部や脳梁といった領域が刺激され、心身の統合感が深まります。

さらに、クンバカ中に呼吸を止めることで得られる静止感は、内的な集中力を高め、瞑想的な状態を誘発します。これは単にリラックスするだけでなく、心の奥深くに潜む静けさとつながり、自分自身をより深く知るきっかけを与えます。

クンバカの哲学的な意義

ヨガの教えでは、クンバカは身体のエネルギー経路(ナディ)を浄化し、プラーナを中央経路(スシュムナ)に導く重要なプロセスとされています。このプロセスは、瞑想の究極の境地であるサマディへと私たちを導きます。特に「ケヴァラ・クンバカ」と呼ばれる努力を伴わない自然な呼吸停止の境地では、私たちは呼吸そのものを超え、宇宙との深い一体感を体験することができるとされています。

ここでクンバカの種類をご紹介します。

・吸った後 アンタル クンバカ
・吐いた後 バヒル クンバカ
・意図的に サヒタ クンバカ
・自然に ケヴァラ クンバカ

日常に活かすクンバカの実践

クンバカは高度な技法ですが、日常でも簡単な形で取り入れることができます。たとえば、息をゆっくり吸い込み、同じくらいの時間をかけて吐き、その間にほんの少しの静止を挟む。この「呼吸の間」を意識するだけでも、心が静まり、集中力が高まるのを感じるでしょう。

クンバカとは単なる呼吸の一部ではなく、呼吸と静けさの間に広がる宇宙そのものです。この静寂の中で私たちは、内なる世界の深さに触れることができます。

最後にアムリタナダ ウパニシャッドにある呼吸に関する詩篇をご紹介して、今回のクンバカについての第一弾を終えたいと思います。

心(ハート)の中の虚空(アーカーシャ)よりヴァーユを引き上げ、

身体をヴァーユなき空(から)とし

魂を虚無の境地へと結びつけること これを「レーチャカ」と呼ぶ

蓮の茎を通して水を静かに口に含むように

ヴァーユを体内へと取り込むことを  これを「プーラカ」と呼ぶ

呼吸とは、私たちの内と外を行き交う生命の波

それは虚空と大地を繋ぎ、 個の境界を超え、宇宙と一つになる道である

参考文献 Prana and Pranayama Swami Niranjanananda Saraswati

クンバカについては、机上の学びだけではなく、実践した体感を交えながら、少しずつ深い記事を書いて以降と思いますので楽しみにしていてくださいね。

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