「ヤマ・ニヤマを日常に」シリーズ――サントーシャの実践
これまでのシリーズでは、アヒムサ(非暴力) を「花の福袋」を通して、タパス(精進・自己鍛錬) を「新月と新年のエネルギー」を通して、そして スワディヤーヤ(学習・読誦) を「読書を通じて自分を知ること」としてお伝えしてきました。(各記事へのリンクは記事末尾にて)
ヨガの教えは、古くて難しいものではなく、日常の気づきを通して実践できるもの。
そう思いながら、このシリーズを続けています。
今回は、ニヤマの一つ「サントーシャ(満足)」 について書いてみたいと思います。
有り難いと思える心、それがサントーシャ
サントーシャは、「足るを知る」「今あるものに満足する」と訳されることが多いですが、単なる「現状に甘んじること」ではありません。
むしろ、サントーシャとは 「有り難い」と思えるスキルを磨くこと ではないかと思っています。
実践のキーワードは、“気づく”こと
「有り難い」という言葉は、「あることが難しい」、つまり 「当たり前ではなく、稀で貴重なもの」 という意味です。
・朝目を覚まして、新しい一日を迎えられること。
・風が吹き、空に雲が流れていくのを感じること。
・手を動かし、食事を作ったり、仕事ができること。
これらは決して「当たり前」ではなく、本当は「あることが難しい」もの。
だからこそ、そのことに気づいたとき、私たちの心には自然と 「有り難い」という感覚が生まれます。
多くの人は「満足」を、「何かを手に入れることで得られるもの」だと考えがちです。
新しいものを買ったり、より良い環境を求めたり、目標を達成することで「満たされる」と思ってしまう。
でも、どれだけ物や環境が整っても、それだけでは 「もっと欲しい」「これがなければ満足できない」 となりがちです。
本当の満足は、何かを得ることではなく、すでにあるものに『有り難い』と気づくことから生まれるのではないでしょうか。
「有り難い」と感じるスキルを磨くのがヨガ
いつもワタシが言っていることですが、ヨガの練習は、単に体を動かすことではありません。
「いつもと同じ(ように見える)こと」を、新しい視点で観察することのできる力を養うもの ともいえるのではないかと思っています。
たとえば、同じアーサナ(ポーズ)を毎日繰り返すと、最初は新鮮だった動きも、いつしか「単なるルーティン」になってしまうことがあります。
でも、その一つひとつの動きを丁寧に観察する意識を持っていれば、同じように見える動きの中に、微細な違いを見出すことができる はずです。
それは、呼吸の深さや、筋肉の感覚、関節の微妙な変化だったり、前日とのコンディションの違いだったりするかもしれません。
日常で気づく実践例
これは日常生活でも同じことが言えます。
・毎朝のコーヒーを「いつもの味」だと思うのか、それとも「今日の香りは何か違うかも?」と思うのか。
・料理を作るとき、大根を切っている時「いつもと同じ大根」と思うのか、それとも「この大根は皮がしっかりしていて瑞々しいな」と感じることができるのか。
・誰かと会話をするとき、「いつもの会話」と流してしまうのか、「この瞬間、この人と話すこと」と思うのか。
ワタシたちは、どんな瞬間にも「当たり前」と「有り難い」のどちらの視点も持つことができます。
どちらの視点を選ぶかが、日々の満足度を大きく左右するのではないかなと思います。
サントーシャを育てるためにできること
サントーシャを育むために、日常で簡単にできることがあります。
① いつもの行動に意識を向ける
ヨガの練習と同じように、日常の動作を「丁寧に観察する」ことから始めてみましょう。
たとえば、「ただ歩く」のではなく、「足の裏の感覚をしっかり味わいながら歩く」
「ただ食べる」のではなく、「噛むごとに味や食感の変化を感じる」
これっていつもワタシが言っている瞑想的に生活するってことですよね。
② 小さな「有り難い」を見つける
いまこの瞬間にしか味わえないことを探してみましょう。
「今日は気持ちのいい風が吹いているな」「この花、昨日より少し咲いているな」「手を動かせるって有り難いな」
意識してみると、「有り難い」と思える瞬間は、実は日常のあちこちに散らばっています。
③ 「足りない」にフォーカスしない
「これがないから幸せになれない」「もっと◯◯があれば満足できる」という思考は、満足から遠ざかってしまいます。
「今あるもの」に広く意識を向けることで、満足の感覚が育まれていきます。
「有り難い」と思える瞬間を増やしていこう
サントーシャは「満たされる」のではなく「満たされていることに気づく力」。
そして、その力を育てるのが、ヨガの実践なのだと思います。
「今日はどんな小さな『有り難い』があるかな?」
そう思いながら一日を過ごしてみると、何気ない日常が、少しずつ違って見えてくるかもしれません。
究極的には、『呼吸をしているだけで感謝の気持ちが湧いてきましたー』と実際の生徒さんが何人も報告してくださっています。
サントーシャの心を育てることで、ヨガの実践も、日々の暮らしも、より豊かで穏やかなものになっていくはずです。
「ヤマ・ニヤマを日常に」シリーズ
今後も少しずつ順番に書いていきますね。乞うご期待!
【ヤマ(社会的な倫理規範)】
アヒムサ(非暴力)☜ https://kaonyoga.com/inner-soul-yoga-ahimsa/
サティヤ(正直)
アステヤ(不盗)
ブラフマチャリヤ(禁欲・調和)
アパリグラハ(不貪・執着しない)
【ニヤマ(自己鍛錬・内的規律)】
シャウチャ(清浄)
サントーシャ(知足)☜ 今日の記事
タパス(精進・自己鍛錬)☜ https://kaonyoga.com/inner-soul-yoga-tapas/
スワディヤーヤ(自己学習・聖典の学び)☜ https://kaonyoga.com/inner-soul-yoga-swadhyaya/
イーシュワラ・プラニダーナ(信愛・神への委ね)
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