この記事は、瞑想を段階でとらえる「瞑想の地図」シリーズの第3回です。第2回「「眠れない」夜のためのヨガニドラー」では、意識を保ったまま深く休むという練習についてお話ししました。今回はその続き。「意識では、どうにもならない層」のお話です。
「頑張っているのに、変われない」
ワタシを検索してくださる方のセッションでは、かなりの確率でこんな言葉を聞きます。
「いろんな学びをしましたが、、氣がつくとまた同じパターンに戻っているんです」。
肩の力を抜きましょう、と言われて、頭では「はい」とわかっている。でも次の瞬間にはもう、肩がすっと上がっている。手放そうと決めたはずの緊張が、いつの間にか元の場所に戻っている。まるで、押入れに仕舞ったはずの荷物が、朝になると玄関に出ているような感じです(笑)。
これは意志が弱いからでも、練習が足りないからでもないと、ワタシは断言できます。その緊張は、意識の手が届く場所にあるわけではないからです。だから意識からのアプローチではちょっと変わったように見えても、本質的な変化にはつながらないのは当たり前のことなんです。
ヨガを30年続けてきたワタシが、TREに出会った日
TREに出会ったのは2019年のことでした。
『感じるヨガで、』を読んでくれた知人が2人、別々のタイミングで、口を揃えたように言ったのです。「カオンちゃんには、TREが絶対いいと思う」。
2人が同じことを言うなら、と東京で開かれていたヨガ×TREのコラボイベントに参加してみました。そこで体験したのは、「身体が勝手に動く」という、それまでのヨガの実践では出会ったことのないアプローチと感覚でした。
自分では何も意図していないのに、股関節の辺りがむずむずして、時々ピクッとか左右のリズムがバラバラだったり、、。初めはこれは自分で動かしてるのか??という曖昧な感覚だったのが、だんだんとカラダの深いところへと波及していき、脚が、腰が、勝手に揺れていく。頭は「え、何コレ?」とずっと驚いているのに、カラダはどこか懐かしそうに、嬉しそうに揺れている。
30年近く意識の側からカラダに耳を澄ませてきたワタシにとって、カラダの側から一方的に話しかけてくるようなこの体験は楽しく、そして衝撃的でした。それが証拠に帰り道にはもう、プロバイダー資格を取ることを決めていましたから(笑)。
TREとは何か
TRE(Tension & Trauma Releasing Exercises)は、アメリカのデヴィッド・バーセリ博士が開発した、緊張とトラウマを解放するためのエクササイズです。
野生の動物は、命の危険を感じるような強いストレスを受けたあと、全身をブルブルッと震わせて、その体験をカラダから振り落とすと言われています。この「神経性の震え」は、実は人間にも備わっている仕組みです。特に日本人は“武者ぶるい”という言葉もあるようにちゃんと知っていたんだと思います。ただワタシたちは、文化的背景から「人前で震えるのはみっともない」と、この震えを抑え込むことを学んでしまいました。
TREでは、いくつかの簡単なエクササイズで筋肉に軽い疲労を起こし、その筋肉疲労からくる震えを呼び水にして、この眠っていた震えを呼び覚まします。あとはカラダにお任せ。揺れの大きさも、場所も、順番も、全部カラダが決めていきます。
なぜ「揺れ」なのか——意識が届かない層の話
頭で「手放そう」と決めても手放せない緊張があります。それは意志が弱いからではなく、その緊張が意識の届かない層——神経系や、股関節の奥にある大腰筋といったカラダの深い部分——に保管されているからです。TRE(緊張・トラウマ解放エクササイズ)は、カラダに本来備わっている神経性の震えを使って、この深い層の緊張を解いていくワークです。最大の特徴は、動きの主導権を頭ではなくカラダに渡すこと。どこを、どの順番で、どれくらい緩めるか。それを決めるのは、あなたの頭ではなく、あなたのカラダです。
瞑想は、意識の側からのアプローチです。それはとても深く、遠くまで行ける道ですが、「意識でアプローチできるのは、意識が届く範囲まで」という、当たり前だけれど見落とされがちな限界があります。長年の緊張の癖や、言葉になる前の記憶は、その範囲の外側に仕舞われていることが多いのです。
TREの揺れは、その外側に、意識を経由せずに触れていきます。だから、頭が納得するのを待たなくていい。カラダが解きたい順番で、解けるところから解けていく。この感じは、体験してみると「ああ、こういうことか」と一発でわかるのですが、言葉にすると本当にもどかしいですね(汗)。
ヨガとTREの補完関係
「じゃあヨガはいらないの?」と聞かれそうですが、そうではありません。
ヨガは意識的・意図的なワーク。TREは無意識的・自律的なワーク。向きが正反対だからこそ、この2つは補い合います。
瞑想の地図で言えば、第1回でお話しした「気づき」は、自分の内側を観る練習でした。第2回のヨガニドラーは、意識を保ったまま深く休む練習。そして今回のTREは、意識をいったん脇に置いて、カラダに主導権を渡す練習です。「観る」から「委ねる」へ。地図は少しずつ、明け渡し(サレンダー)の方向へ進んでいます。
ワタシ自身は、TREで大きな緊張が解けたあとの瞑想が、それまでとは別物のように深くなることを何度も体験してきました。カラダという土台が緩むと、意識は安心してそこに座っていられるようになる。順番としては、カラダが先なのかもしれません。
こんな人に、特に届けたい
「力を抜くのが下手」と自覚している方。休みの日に一日ゴロゴロしても、回復した感じがしない方。ヨガや瞑想を続けているのに、いつも同じところで止まっている感じがする方。
頑張ることが癖になっている人ほど、「カラダに任せる」という体験そのものが初めてだったりします。最初の揺れはほんの小さなものかもしれません。それでも、自分のカラダが自分のために勝手に働いてくれるのを眺める時間は、「頑張らなくても、ちゃんと進む」という感覚を思い出させてくれるのではないかと思います。
なお、精神的なお悩みを抱えている方は、必ず専門医の診察を受けてください。TREは医療に代わるものではないことを、ご理解いただいた上で読んでいただけたら嬉しいです。
Q&A
Q1:TREは危なくないですか?
A:認定プロバイダーの誘導のもと、揺れを自分で止める方法を学びながら少しずつ行えば、安全性の高いワークです。自己流で長時間行うことはお勧めしていません。
Q2:震えが出ない人もいますか?
A:います。抑える癖が強い方ほど、最初の揺れは小さいものです。出ない=効いていないではなく、カラダが安心できる段階から始まっているのだと捉えています。
Q3:ヨガ経験がなくてもできますか?
A:できます。柔軟性も経験も必要ありません。むしろ「体を動かすのが苦手」という方との相性が良いと感じることも多いです。
Q4:1回で効果はありますか?
A:「脚が軽い」「その夜よく眠れた」という声は初回からよくいただきます。ただ、長年の緊張の癖は少しずつ解けていくものなので、継続をお勧めしています。
原村で、カラダに任せる2日間を
この夏、長野県原村に、リトリートの場「ヒルナノーグ」を開きます。ケルト神話の理想郷・常若の国(ティル・ナ・ノーグ)から名づけた、週末だけの小さな宿です。八ヶ岳の高原の中で、TREとヨガニドラーと、それからもう一つの不思議な道具を組み合わせた2日間を準備しています。
神経系を整える全体マップはこちら
頭ではなくカラダに任せる時間を、一度ちゃんと味わってみたい方へ。プログラムの詳細や先行のご案内は、公式LINEから順にお届けしています。「TREって私に合うのかな?」という質問だけでも、氣軽にメッセージくださいね。



