TREで体も心もゆるめる―ストレスや感情の抑圧がもたらす影響

TRE（Tension & Trauma Releasing Exercises）は、「トラウマ解放エクササイズ」と呼ばれますが、心理療法ではなくソマティック（身体志向）のボディワークです。

私たちの体は、日々のストレスや過去の経験による緊張を、無意識のうちにため込んでいます。でも、その緊張を「なんとかしよう」と頭で考えても、なかなか手放せないものです。TREは、そうした緊張を思考ではなく、体の動きを通じて解放する方法 です。

今日は、TREをオンラインで継続して受けてくださっているユキさんのお話をご紹介します。

肩こり解消にTREを始めたユキさんのお話

ユキさんは二拠点生活をされていらっしゃるせいか、移動が多く、日頃から運動不足も感じている方です。

肩こりは「いつものこと」と思っていて、マッサージを受けても肩から背中にかけてのコリがなかなか取れないそうです。

でもTREをすると、すぐに肩のこわばりが解消するため、月に1回のペースでセッションを受け続けてくださっています。

1年後に気づいた「胸の固まり」

1年ほど経った頃、肩甲骨の下あたりの緊張がなかなかほぐれないことに気づきました。TREのシェイク（振動）の際に、そこにボールを当てて解放を促してみたのですが「気持ちが悪くなる」と仰います。

こうした身体の反応は、単なる筋肉のこわばりだけでなく、感情的なエネルギーが関係していることがあります。

セッションの終わりに「感情を我慢していると、気持ち悪くなることがあります」とお伝えした際、ユキさんは「え？」と少し驚いた様子でした。

TREは、体が自然に持つ調整力を引き出すワーク なので、感情を言葉で分析したり、思考を使って理由を探したりする必要はありません。ただ、シェイク中に 心の奥にあるものが「あく（灰汁）」のように浮かび上がってくる ことがあります。
これを知っておくと、よりスムーズに解放が進みます。

「それはたくさんある」

ユキさんは、胸の固まりをほぐそうとするとどうしても気持ち悪さが出るため、しばらくは、その部分に対して無理にアプローチせず様子を見ることにしました。

すると、数ヶ月後のセッションで、「シェイクの後、少し頭が痛いような感じがする」とおっしゃるようになりました。

そこで再び「感情を我慢していると、頭痛が出ることもあります。」とお伝えしました。その後ユキさんの反応を伺いながら、少しだけ進んでも大丈夫と判断し「何か我慢していることはありますか？」とお聞きしてみました。

「それはたくさんある」 と、ぽつりとユキさんからの返答。

ワタシは「そうなんですね。でも、それを細かく話す必要はないですよ」と、伝えるとユキさんは少し安心した表情になりました。

そして「何かあるのだけれど、それが何なのかわからない」とおっしゃるので、「わからなくても、何かあるなーと、わかっているだけで今は大丈夫ですよ」とお伝えしました。

TREはあくまでも、体から自発的に解放されるに任せるワークです。なので、無理に引っ張り出すことは一切せず、生徒さんのそれぞれのタイミングに任せて、セッションを進めていきます。（体についても心についても）

感情を抑え込むことの影響

感情を抑え込むことへの影響を少し説明しますね。

感情をずっと抑え込んでいると、体にも影響が出てきます。それは、まるで握り拳をずっと握り続けているような状態だとイメージしていただくと分かりやすいかもしれません。ずっと力を入れ続けなければならず、それが慢性的な疲れや緊張につながってくるなと想像できますよね。

日本人は特に「感情を抑える」ことが美徳とされる文化の中で育ちます。怒りや悲しみを「表に出さないこと」が求められ、感情の扱い方を学ぶ機会もほとんどありません。

そのため、長年感情を抑え込んでいると、それに気づかないまま「疲れが取れない」「体が重い」「なんとなく不調」といった症状が出てくることがあるのです。

そして、限界を超えたとき、急に爆発するように怒りっぽくなったり、心が不安定になったりすることもあったりするのです。

これからのユキさんの変化

これに少し気づき始めたユキさんの、次回以降のセッションがどのような流れになるかはわかりません。

でも、ユキさんが「無意識のうちに蓋をしていた感情」に向き合うタイミングが来たのかもしれない。もしそうなら、それは大きなチャンス。体が自ら「手放してもいい」と準備を始めたサイン　だからです。

そのサインに寄り添いたいと思います。

体の力を抜くことから始めよう

「最近、なんだかずっと力が入っているな…」
「考えすぎて、頭が疲れている…」「深く眠ってない感じがする」

そんなふうに感じている方には、TREのようなソマティックなアプローチ が役立つかもしれません。

体が本来のバランスを取り戻す感覚、ぜひ体験してみてください。