「眠れない」夜のためのヨガニドラー——身体は眠り、意識は起きている

仰向けで休みながら意識を保つヨガニドラーの解説記事アイキャッチ

この記事は、瞑想を段階で捉える「瞑想の地図」シリーズの第2回です。第1回「マインドフルネスは瞑想のゴールではない」から続けて読むと、地図の全体が見えてくると思います。

目次

「眠ろう」とするほど、眠れなくなる夜

レッスンや個人セッションで、時々こんな相談を受けます。

「夜、なかなか寝付けない」「やっと眠れても、朝起きたとき全然休めた感じがしないんです」。

ベッドに入って、目を閉じて、「早く眠らなきゃ」と思えば思うほど、頭の中はグルグル思考でいっぱい。眠ろうとする努力そのものが、眠りを遠ざけてしまう。そんな経験、ワタシにも何度もあります。

最近では、眠れないからずっと動画を見て、寝落ちっていうパターンも多いかもしれませんね。

ヨガニドラーは「眠るため」のものではない

ヨガニドラーという言葉を初めて聞くと、「寝るためのヨガ」「ぐっすり眠れる瞑想」というイメージを持たれることが多いのではないでしょうか。

たしかにクラスの最後に行うシャバーサナと同じように、仰向けになって行います。けれどヨガニドラーが目指しているのは、「眠ること」そのものではありません。

シャバーサナが「ポーズを終えて、全てを手放して重力に浸る時間」だとすれば、ヨガニドラーはそこからもう一歩、意識の使い方そのものに踏み込んでいく時間です。

眠りと覚醒のあいだにある、とても細やかな境界線を、意識的に歩いていくような実践なのです。

身体は眠っているのに、意識は起きている

このヨガニドラーの状態を、ワタシは「身体は眠っているのに、意識は起きている」と表現することがあります。

カラダはどんどん緩んでいって、手も足も重たく、まるで眠りに落ちる直前のような感覚になっていく。なのに、その「緩んでいく感覚」そのものを、ずっと観ている自分がいる。

たとえばラジオだったら、そのノイズだけがふーっと小さくなっていくような感覚、と言えば少し伝わるでしょうか。眠りに向かう感じはそのまま流れていくのに、意識はその流れそのものを静かに見つめている。最初は不思議に感じるかもしれませんが、この「眠っているのに、起きている」という状態こそ、ヨガニドラーの入り口です。

だからヨガニドラーは、よく眠るための瞑想ではないと、断言します。身体の感覚をゆっくり緩めながらも、意識はその変化をずっと観ている。眠りに向かう流れに乗りながら、その流れを見ている自分がいる。「眠っているのに、起きている」という状態。

これは特別な能力が必要ではないのですが、ちょっとした訓練というか練習が必要です。ただ、自分という意識が自分の身体という器の中でしばらくの間、安心してじっとしていられるという神経状態にならないと難しいのです。

眠れないと思考がぐるぐるしたり、寝落ちするまで動画を見てしまうという行為は、身体の中で意識が安心することができていない代替行為といえるかもしれません。

仰向けになってカラダの声にそっと耳を澄ませる。

ちょっと試してみませんか?

雪の上で、その感覚に触れた体験

以前、「雪の中でゼロになる 瞑想会」を開いたことがあります。雪の上に体を横たえて、ただそこに在る。普段なら寒さや不快感でとても長くはいられないはずなのですが、参加者さんは、それとは反対に、心地よく、静かに温かい氣もちになれたとおっしゃってくださいました。

カラダは雪の冷たさをちゃんと伝えてきます。でも、それがあまり嫌な感覚にはならないのです。それは静かで凛とした空気の中で自分という身体も静かで凛とした感覚でそこに自分が浸ることができているからです。カラダは確かにそこに在って、意識はその「在る」を、静かに見ている。あの雪の中瞑想の感覚は、ヨガニドラーで体験する感覚と、とても近いものだったように思います。

「眠ること」と「休むこと」は違う

ここまで読んで、「結局、眠ってもいいの?」「どっちなの?」と思われた方もいるかもしれません。

ワタシは、眠ってしまっても大丈夫だと思っていますし、実際にセッション中ではそのようにお話もしています。ヨガニドラーの最中に眠りに落ちることは、決して失敗ではありませんから。ただ、「眠ること」と「休むこと」は、似ているけれど少し違うように思っています。眠りは、意識をいったん手放すことになります。意識が全然ない夢を見ないような眠りの後に、「あーよく寝た」と感じますよね。休むことは、意識を保ったまま、深く緩んでいくことです。どちらも必要な時間ですが、ヨガニドラーが連れていってくれるのは、後者の「休む」の方。こうした深い休息が神経系の回復につながるという研究報告も出てきています。

シャバーサナとの違いをもっと知りたい方は「シャバーサナ完全ガイド」に、仰臥瞑想の脳科学的な視点は「仰臥位瞑想で脳のデトックス?」にまとめていますので、氣になる方はそちらも覗いてみてください。

Q&A

Q1:ヨガニドラー中に眠ってしまうのですが、それでもいいのですか?

A1:大丈夫です。眠ってしまうのは、カラダが深く緩んだサイン。失敗ではなく、その時のあなたの身体にとって必要な反応のひとつです。

Q2:「意識は起きている」と言われても、感覚がよくわかりません。

A2:最初はわからなくて当然です。「わからないな」と感じていること自体が、すでに意識が働いている状態だったりします。

Q3:シャバーサナとヨガニドラーは何が違うのですか?

A3:シャバーサナは姿勢(アーサナ)、ヨガニドラーは意識の状態です。仰向けの形は同じでも、そこから眠りと覚醒の境界を意識的に歩いていくのがヨガニドラーです。

Q4:自宅で一人でも練習できますか?

A4:できます。布団に入る前の数分、ガイド音声を使いながら横になるだけでも、十分に練習になります。

横になって、聴いてみる

「ちょっと試してみたい」と思った方へ。ワタシのstand.fmに「聖なる12夜」という寝たまま聴く仰臥瞑想のシリーズがあります。ヨガニドラーそのものとは少し違うのですが、まずは第1夜「時間の外に横たわる」から、横になって、カラダの声に耳を澄ませてみる——そのくらいの氣持ちで聴いてみてください。身体の感覚から入りたい方は第3夜「身体から少し自由になる」もおすすめです。

そして、眠りや休息のこと、ご自身の神経系のことをもう少し深く知りたくなったら、公式LINEでお声がけください。質問やご相談も、LINEからが一番早く届きます。この「瞑想の地図」シリーズの続き——次回は、頭では解けないものを身体がほどいていくTREの話——も、LINEで一番にお知らせします。

著者プロフィール

ヨガ指導者養成(Yoga AllianceE-RYT500)/TRE国際認定プロバイダー/ippon blade®公式インストラクター

2017年出版の書籍『感じるヨガで、』(※)は、「体の声を聞く」ヨガとして静かな反響を呼ぶ。現在は、オンライン・オフラインでポーズの完成にこだわらない「感じるヨガ」やTRE(トラウマ緊張開放エクササイズ)のワークショップを開催し、30代〜50代を中心に「自分を整えたい」と願う人々をサポートしている。(※)amazonのアフィリエイトリンクが開きます

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