長くTREを続けているのに、何が変わったのか、いまひとつ分からない。
揺れは出る。終わったあとは少し楽になる。でも、暮らしの手触りはあまり変わっていない氣がする。そんな声を、ときどき耳にします。
今日は、ワタシの月1回のTREグループセッションに参加してくださっている、高校教師 ユキさん(仮名)のお話です。ご本人に文章を書いていただき、記事にする許可もいただきました。
ユキさんは、以前TREのプロバイダーもされていた方。TREの仕組みも、効き方も、よーく知っている方です。そのユキさんが「なかなか抜けなかった」と書いてくれた癖がありました。
TREの「振動を通す」の落とし穴
ここは、TREを知っている方ほどドキッとするかもしれません。
ユキさんは以前、あるセッションで聞いた「そこに振動を通す」「その場所に呼吸を通す」という言葉を、「自分が意図して身体に働きかければ変わる」と受け取ってしまったそうです。そしてその癖は、なかなか抜けなかったと。
誘導の言葉が悪いのではありません。頑張る癖のある人は、どんな言葉も「頑張る方法」に翻訳してしまうんです。真面目な方ほど、ここに入りこみやすい。
TREの揺れは、本来、身体に主導権を渡すためのもの。そこに頭の意図が入りこむと、揺れまで「管理」の道具になってしまいます。
TREで変わらないと感じている方の多くは、やり方が足りないのではなく、まだ頭(意図)が手放せていないだけなのではないかなと思います。
では、頭が手放すと何が起きるのか。
ユキさんの場合、それはTREの時間の外側、病気と向き合う日々の中で起きていきました。
「なんとかしなきゃ」が「身体に従おう」に変わるまで
3年ほど前、ユキさんのお母さまに大腸がんが見つかりました。昨年、介護のために仕事を休み、お母さまの暮らしの場所を整えようとしていた矢先のこと。ユキさん自身の股関節の痛みが我慢できなくなって受診したところ、乳がんの再発がわかります。
治療が始まると、とにかく栄養を摂らなければ治療が続けられない。朝、食欲がないと「なんとかしなきゃ!」と、必死で食べられるものを探し、食べ方を変えてみる。その時のユキさんの考え方は、食べられないことは悪いことで、解決策を何か探さなければいけない、というものだったそうです。
点滴の抗がん剤の期間は脚が動かせず、TREはほとんどできませんでした。飲み薬に切り替わって身体が驚くほど軽くなった頃から、ユキさんはイネイト療法と整体を新しく始めます。以前から続けていた呼吸法の朝の会も、仲間と一緒に続けていました。
そしてここ最近、ユキさんはふと氣づいたそうです。
「食欲がない=身体がそう言っているんだからそれに従おう」
身体は、頭の持ち物ではない
身体を大切にしようとするほど、ワタシたちは身体を「管理」しはじめます。食べた方がいいから、食べなきゃとか、動かした方がいいから、動かさなきゃ、とか、ここが硬いから、ここをほぐさなきゃなどです。
思い当たりませんか?
でもそれは、身体を頭の持ち物として扱っている状態のように思えます。もしくは過保護に管理する教育ママみたいに。
身体は、頭の指示がなくても、常に元に戻ろう、と自ら調整を続けています。見つめることは、放っておくことではありません。いつもと違う痛みは、ちゃんと確かめる。そのうえで、頭が慌てて管理しにいくのをやめる。それは諦めではなく、身体への信頼なのだと思います。
ユキさんは今、主治医のもとで治療を続けながら、足がしびれていても、どこかに強い痛みが出ても、「あぁ、身体が何か訴えてるなぁ」とただ見つめていられるようになったそうです。
何もしない。でも、見捨ててもいない。
本当に辛いとき、助言も何も言わずにそっと隣にいてくれる友人がありがたいのと、同じことなのかもしれません。
「ちゃんとしなきゃ」は、身体にだけ向いていたわけではなかった
ユキさんの文章の中で、ワタシがいちばん心に響いた一節があります。
お母さまを見送ったあと、ユキさんは氣づいたそうです。
「母のことをちゃんとしなきゃ、母が困らないように」とずっと考えて動いてきたけれど、それは結局、お母さまを自分の支配下に置いていただけだったのではないか、と。そして、それはご自分の生徒さんに対しても同じだったのではないか、と。
身体を管理しようとする頭と、大切な人を管理してしまう頭は、たぶん同じ根っこなのだと思います。
思い通りにならない身体が、それを教えてくれた。「あんたがいくらがんばったって、どうしようもないんだよ」と、身体に言われているようだったと、ユキさんは書いています。
「前回のこと、あまり覚えてない」
ユキさんが、ワタシのセッションについて書いてくれた言葉があります。
「カオンさんのセッションは、一言でいうと『パイプ』です。」
それはどういう意味かというと、セッション中、ワタシの意志を感じない。もしくは感じさせない。何かわからない大きなものと繋がるための、橋渡し、パイプのようだ、と。
実は先日のセッションでは、先月のセッションで心に残ったことをシェアしてくださった方に、ワタシは「すみません。前回のこと、あまり覚えてないんです、、。」と言って、みんなで大笑いしました(笑)。ユキさんはそのとき、「これやな」と思ったそうです。
正直に言うと、これはワタシが意識していることです。学んできた技術や知識は、きちんと揃えておく。そのうえで、その場で何が必要かは、ワタシが決めない。そう決めて座り続けているうちに、自我でどうこうしようとする力が、自然と抜けていきました。
TREで揺れを身体に任せるように、セッションの場も、ワタシの意図ではなく、そこにいる人の身体と、その身体たちがつくる場に任せています。グループでも、パーソナルでもそれは同じです。
頭とからだは、一つではないし、二つでもない
少し前のセッションで、ワタシはこんな言葉をお伝えしました。
「『頭とからだは一つではないし、二つでもない』。この間をどのように埋めるかはその人次第なのではないかな。」
ユキさんはこの言葉から、身体を「頭ではどうしようもない、別のもの」として捉え直し、その上で対話を楽しむようになったそうです。
一つだと思えば、頭は身体を支配しようとする。二つだと思えば、置き去りにする。ユキさんの埋め方は、そのあいだで、隣に座って話しかけるように付き合っていく、というものでした。
ユキさんの変化は、TREだけで起きたものではありません。いくつもの出会いと、お母さまを見送った時間と、病気そのものが運んできたものです。ただ、その中でTREの時間が、頭が手放す練習のひとつになっていたのなら、こんなに嬉しいことはありません。
治療中の方にとって、何かのヒントになれば。ユキさんは、そんな思いでこの文章を書いてくださいました。
なお、TREはがんをはじめとする病気の治療に代わるものではありません。治療中の方は、必ず主治医に相談してください。精神的なお悩みを抱えている方も、専門医の診察を受けてくださいね。
Q&A
Q1:長くTREを続けているのに、変化がよくわかりません。
A:変化は、セッション直後より、数ヶ月後の暮らしの中に現れることがあります。「何が変わったか」を探すより、「最近、何をしなくなったか」に目を向けると、氣づくことがあるかもしれません。
Q2:揺れているときに、意識して振動を送るのはよくないのですか?
A:悪いことではありません。ただ、意図が強くなるほど、揺れは頭の管理下に入っていきます。慣れてきたら、揺れを「起こす」側ではなく「眺める」側にまわるのもひとつです。
Q3:病気の治療中でもTREはできますか?
A:主治医に相談してからにしてください。体調や治療の内容によっては、できない時期もあります。ユキさんも、点滴の抗がん剤の期間はほとんどできませんでした。
Q4:グループセッションでも変化はありますか?
A:個人セッションとは違う良さがあります。提供者の意図が一人に向きすぎない分、自分の身体に任せやすいと感じる方もいるようです。
頭が手放す時間を
月1回、オンラインでTREのグループセッションを開いています。基本は毎月第3木曜日の夜8時から。一人で揺れを出せる体験者向けです。TREが初めての方は、先に個別のセッションを受けていただいてから、グループにご参加いただけます。【TREについてはこちら】
頑張って身体を変えようとすることに、少し疲れてきた方へ。
日程のご案内は公式LINEでお知らせしています。「私にも合うかな?」という質問だけでも、氣軽にメッセージくださいね。



